FC2ブログ
立教生ができる支援とは?立教生ができる支援をやろう!私たちができることを考え実行するプロジェクトとして、立教大学社会学部が立ち上げた「RDY(立教生ができることをやろう)支援プロジェクト」のブログ
tunakan201908

  「はい!もしもし~」


  唐桑御殿つなかんの女将、菅野一代さんによるおもてなしは、予約の電話をかけたときから始まっていました。ツアー初日(8月19日)に宿泊する民宿、つなかんの予約担当だった私が名乗ると、「あら、立教大学さんねー、いつもどうも~」と明るい声で歓迎してくれました。私は今回、ツアーに参加するのが初めてだったので、この声を聞いたときから、「はやく一代さんに会ってみたいな~」と、ツアーに行くのが待ち遠しくなりました。

  そしてツアー初日、私たちがつなかんを訪れると、一代さんは「おかえり~」と言いながら、電話で聞いたときと変わらない、元気で明るく温もりのある声で私たちを迎えてくれました。「いらっしゃい」でも「遠いところわざわざ・・・」でもなく「おかえり」。自分の家以外で、しかも初めて訪れた場所で、私を「おかえり」と言って迎え入れてくれる場所に出会ったのは初めてでした。そしてそこに、「ただいま~」と言って入っていく先輩方を見て、ここは「誰でも帰れる家」のような存在なのだと感じました。

  夕食のおもてなしは、これでもか!というほど豪華でした。海鮮丼、マグロのホホ肉の煮付け、グラタン、カキフライ、冷や奴、たくあん、そして「今日は(いつも来てくれる)立教大学さんが来るから特別~」と言って用意してくれたフカヒレスープ・・・。どれも本当においしくてお腹いっぱいになりました。デザートのスイカが運ばれてくると、一代さんが「甘くなる魔法~♪」と言いながら塩をふりにきました。こんなさりげないやりとりもが、私たちを笑顔にしてくれました。気づくとお腹だけでなく、胸もいっぱいになっていました。
tunakan's_supper201908

  食事が終わり、片付けを手伝っていたときに「献立はどうやって決めているんですか?」と聞くと、「全部一代さんが決めるんだよ。すごいこだわるんだから~」と一代さんとともにつなかんを切り盛りするふみちゃんこと佐々木文子さんが教えてくれました。そのほかにも、「今日は誰の話を聞いてきたの?」、「明日はどこに行くの?」、「この夏休みはこんなお客さんが来て・・・」など、初めて会ったとは思えないくらいの親しさでたくさん話をしてくれました。

  夜のプログラム(この日の夜は、立教大学出身で唐桑に移住された、まるオフィスの根岸えまさん、若林詩織さんをつなかんにお呼びして、お話を伺いました。)が終わると、みんなで集まり、一代さんとふみちゃんを囲んでざっくばらんにおしゃべりをしました。話は身近なことやたわいもないことで盛り上がりとても楽しい時間を過ごしました。お二人がそこにいるだけで、場の雰囲気が明るくなり、私たちも自然と笑顔になっていました。

  翌朝、一代さんとふみちゃんは早くから食事の準備をしてくれていました。「おはようございます」と声をかけると、お二人とも昨日夜遅くまで話していたことも忘れるくらい元気な声で「おはよう!」と返してくました。朝食も大変豪華なものでした。ごはん、味噌汁、サラダ、納豆、切り干し大根、鮭、漬物、卵、ヨーグルト・・・。朝からこんなに食べきれない!というくらい出てきてびっくりしましたが、どれもおいしく、しっかり完食しました。

  食事が終わり、昨日の振り返りのためにみんなで居間に集まりました。みんなから盛んに意見が飛び交い、一人一人が自分の考えを熱く語っていてとても有意義な時間でした。

  その光景を見ていてか、あるいはそれは関係なかったのか、わからないですが、私たちの振り返りが一通り終わった後、一代さんが「私も少しだけ話してもいい?」と言って私たちのもとにやってきました。「そんな上手に話せないんだけど」と前置きしつつも、そこで一代さんが語ってくださった言葉というのは、他の誰にも語れない、私たち学生の心に大変響くものでした。

Ichiyo's_lectuer201908

  「いい?人生、覚悟を持って生きなきゃダメだよ。人生何が起こるかわからないからね。今を一生懸命生きること。それが一番大切なことだよ。過去のことを振り返っても仕方がない。かといって、将来のことをどうしようかと考えてもダメ。人間いつ死ぬかわからないんだから、今この瞬間を精一杯生きること。」

  一代さんは、2010年に発生したチリ地震による津波の影響で、それまで営んでいた牡蠣の養殖業を停止せざるを得なくなりました。その後、やっとの思いで事業を立て直した矢先に東日本大震災が発生し、再び休業を余儀なくされました。そんなとき、ボランティアで訪れた学生に、「雨露をしのぐために軒先に泊めて欲しい」と頼まれ、寝泊まりするところを提供しました。それからちょっとした食事も提供するようになったことがきっかけで、学生が「いつでもまた帰って来られるように」と2012年自宅を改修して民宿を始めました。その後、牡蠣の養殖業も再開し、この唐桑ツアーでも毎年つなかんを訪れるようになりました。しかし、2017年3月、海難事故により一代さんは旦那様、長女、三女の旦那様を亡くされました。その後は民宿も休業を余儀なくされましたが、なんとか再開を果たし、今回のツアー代表の代が再開後初めてつなかんを訪れ、今も交流を続けています。

  「過去を振り返っても仕方がない」とおっしゃった一代さんについて、このことを書くべきか、迷いはありましたが、このことばの重みを私たちはしっかり受け止めて生きていかなければならないと強く感じ書かせていただきました。私たち学生は人生経験が浅いので、小さなことでも後悔をしがちなうえ、将来に対する様々な不安を抱きがちです。そんな私たちにとって「今を生きる」、「覚悟を持って生きる」という一代さんが発したことばは、唯一無二の説得力を持って胸に強く響いたのでした。

  また、一代さんはこんなこともおっしゃっていました。

  「良い人になって、良い気持ち、良い魂を持って生きていけ」

  自分を人と比べ、自分に引け目を感じたり、人に対して悪い気持ちを持ったりすると、表情も悪くなるし、気持ちもすさんでいきます。一代さんは、人を妬んだり拒んだりすることはつらいことであり、きれいな気持ちで、自分の都合の良いように考えて生きた方が楽なのだという意味でこのことばを私たちに言ってくれました。一代さんはこれまでにきっと、私たちには計り知れないほど多くの困難を乗り越えてきたのだと思いますが、それらの困難を、他人や環境のせいにして妬んだり拒んだりするのではなく、自分にとって良いように考えることで乗り越えてきたのだと思います。だからこそ一代さんはつなかんに訪れる人を誰一人として拒むことなく「おかえり」とやさしく迎え入れ、笑顔で話をしてくれます。一代さんのこのことばは私に、将来に向かっていく勇気をくれるとともに、良い魂を持って生きていくという生き方を教えてくれました。きっと励まされたのは私だけではないはずです。予定にはなかった時間ではありましたが、学生全員が一代さんの話に聞き入ったあの30分は大変貴重な時間でした。

  帰る際は一代さんだけでなく、ふみちゃんも外まで見送りに来てくださいました。さらに、私たちの姿が見えなくなるまで大漁旗を振って見送ってくれました。私たちもつなかんが見えなくなるまで車の中から手を振りました。

  私たちの心の中はしばらく、たわいもない会話を通して触れたお二人の温もり、つなかんにいるみんなのあふれる笑顔で満たされていました。このときツアーで毎回つなかんを訪れている理由がわかった気がしました。そして、次のツアーでもまた訪れるのだろうという確信もありました。それは、つなかんがただ単に泊まる場所ではなく、一代さんの人生そのもののように感じられるからです。一代さんやふみちゃんに会いたくて、私たちはつなかんに帰るのだと思います。

  電話から始まっていたつなかんのおもてなし。ツアーから時間が経った今もまだ、私はつなかんにもてなされているように感じます。

(文学科日本文学専攻1年 西𦚰舞子)

group_photo201908
Ichiyo's_smile

スポンサーサイト




【2020/03/26 00:55】 | 未分類
トラックバック(0) |
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック